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絶望と優しさ

とても悲しいことだが、この世界は全ての人間に等しく優しいものではない。

絶望はなんの前触れもなく気まぐれに訪れて、いとも容易くそれまで必死に築き上げてきた人生を崩壊させる。

「何故私ばかりこんな目に遭うのか」という自問自答を繰り返してみたところでなにも変わりはしない。

世界が終わるほどの悲劇に襲われ、寝ても醒めてもその絶望に囚われてしまうことがあったとして、けれどその痛みは他者には理解されることはない。

どこまでいってもただただ自分は自分であり、他者は他者でしかないのだから痛みの完全共有などできる訳がない。

ひねくれ者の私は明らかに口先だけの励ましを受けると「私と同じ人生を歩んでから同じ台詞を吐けるものか聞いてみたいものだ」と思ったりもしてしまう。

絶望の残酷さを知りすぎているが故に、安易に「頑張って下さい!」「生きていればいいこともありますよ!」などと無責任な励ましをかけることもできない。

 

けれど、絶望を知っている人間には他者を思いやれる究極スキルが身につくと私は思っている。

決して傷の舐め合いではなく、痛みを知る者として「こういう時にこうされると辛いな」という最低限の配慮ができる気がする。

もちろん、絶望を知るが故に周囲を疎ましく思いきつくあたるしかできない人もいるし、その人が悪い訳では決してない。

 

けれど「自分はこんなに辛い。だから他人を傷つけても許される」という考えは絶対に間違っていると私は思う。

絶対に、何があっても、誰かを意図して傷つけるべきではない。

 

「優しさだけじゃ生きていけない

   でも優しい人が好きなの」

 

大好きな歌詞で、私の人生のテーマだ。

 

私は傷つけるより傷つけられる方がいい。

そしてどれだけ私を意図して傷つけた相手でも、その人が道端で倒れていたら手を差し伸べる人でありたい。…起こした後には「あんたなんか嫌いや!」と言って逃げ去るだろうけれど。