珍獣
私は珍獣のような生き物だと自分で思っている。
感覚がかなり一般からずれているのを自覚しているし、感情の緩急も特異だ。
仲間はどこにもいない、この世界にたった1匹の異端の珍獣。
自分の目で見えている世界はきっと他の人たちのそれとは違うから、話をしてもどこか噛み合わない。
いつもは強がってやさぐれているけれど、本当はひとりぼっちなのが寂しくて夜になるとぽろぽろ涙が落ちる。
どうして自分は他の人たちとは違うのか、ひとりぼっちなのかと自問自答を繰り返す。
そんな珍獣に同情したり、少しもの珍しいからと寄ってきてくれる奇特な人がごく稀に存在する。
その人は最初は惜しみない愛情を注いでくれる。その愛情は暖かく、心地よくて擦り寄り懐きたくなってしまう。
でも懐き方も甘え方もわからない。
そのうちに飼い主になろうとしてくれた人は飼いにくさを痛感し、珍獣は放置される。
可愛いわけでもなく、醜い心とめんどくさい性質をもったおかしな生き物に飽きて愛想を尽かす。
泡沫の夢だったのだと、残酷な夢だったのだと思い知らされ、淡い眠りから目覚めてすべてを理解する。
もう悲しみという感覚さえない。
ただその現実を受け容れることしかできない。
誰からも愛されないのは全部自分のせいなのだから。
誰からも必要とされないのも全部自分のせいなのだから。
でも。
これだけは言わせて頂きたい。
その子を死ぬまで飼うだけの覚悟がもてない人間には動物を飼う資格はない。(唐突に覚醒する珍獣)
「気が向いた時だけ構えばいいや」「飽きてきたからもういいや」「なんだ、思ったより可愛くないからいらないや」
酷い、酷すぎる。
珍獣にだって感情はある。
覚悟もなく手を出さないで頂きたい。
珍獣は真っ暗闇の奥底でひっそり丸まって、誰の迷惑にもならないようにひっそり暮らし、そこで朽ち果てようとしているだけの生き物なのだから。