眠れない
子供時代から眠ることが苦手だった。
苦手というよりは眠り方がよくわからない子供だったし、今もそうだ。
そして色んな精神の本を読むにつれ、それは私の「脳のアンバランスさ」が大きな要因なのかもしれないと思い始めるようになった。
私は尋常ではなく運動が苦手な子供だったから翌日に体育の授業がある夜には不安で眠れなくなる習慣がついていたのだと思う。
あとはクラスでいじめられていたのも大きかった。「明日もみんなに無視されたり足をかけて転ばされたりするんだろうな」と考えるのもそれなりに辛かった。
本格的な不眠症になり大学病院に連れていかれたが、何故眠れないのかの原因はついぞ理解して貰えなかった。それどころか「何故眠らないのか」と理不尽な虐待を夜な夜な母から受ける羽目になり、そうなるとさらに眠れるはずはなく、小学生にしていつも目の下にクマがあるような覇気のない子供としての私が形成されてしまった。
成長してからも私の「布団に入り目を閉じると悶々として眠れない」習慣は変わらず、その時々の悩みに押し潰されそうになりながら丑三つ時を迎える日々が続いている。
何かの検査をする時には最悪の結果しか想定できず震え、親が他界した後に天涯孤独になった自分の5年10年を想像して咽び泣き、過去に見送ってきた動物たちとの別れの瞬間を思い出し後悔に胸を掻き毟り、今お世話をしている生き物たちとのいつかの別れを想像して逃げ出したくなり、誰かとの出逢いを喜びつつもそれは別れへの始まりだと憂い、誰かに言われた言葉やされたことを反芻して苦悩し、自分が言ったことやしたことを猛省して消えてしまいたくなり、今の自分の生き様をただただ恥じて投げやりになりたくなる…そんなことを毎晩毎晩、飽きもせず繰り返している。そりゃあ眠れるわけがない。
けれど、目を閉じた瞬間にこういった負の感情が洪水のように押し寄せてきてしまう。私はただそれに飲み込まれるしかない。
この「究極のマイナス脳」はそもそもの脳の構造だからどうにもならない部分が大きいのだということを最近学んでしまった。
きっと私は境遇もマイナスの方向に突出して異質だったけれど、それだけじゃなく自分の体質や気質なども特異すぎるのだろう…だからこれでもかと拗れまくり、こんなにも生きていることが辛い。
このままでいいとは言い難いので、そんな自分を否定しない上で何かしら改善策を模索していかなくてはならない。
それが少しでも功を奏せば少しは夜に眠れるようになるかもしれない。
いつか、幸せな二度寝というものをしてみたい。
お布団の中を安心出来る場所だと感じてみたい。
それらはきっと幸せなことなのだろう。